頚椎捻挫(けいついねんざ)は、頚椎(首の椎骨)の周囲の筋肉や靭帯に急激な動きや強い外力が加わったことによって損傷が生じている疾患です。

原因

頚椎捻挫の原因は以下のようなものがあります。

  1. 交通事故:
    特に後方からの追突事故(リアエンド衝突)が頚椎捻挫の一般的な原因です。 事故の際、後方からの急激な加速力によって首が前方に振られ、その後逆方向への運動が(ホイップラッシュ現象)が起こり、首の筋肉や靭帯が損傷することがあります。
  2. スポーツの怪我
    スポーツ中に大きな首の動きや衝突が起こることが頚椎捻挫の原因となります。 特にコンタクトスポーツ(例、ラグビー、アメリカンフットボール、ボクシング、格闘技)やモータースポーツの選手にとってリスクが高いです。
  3. 転倒、転落
    転倒時に勢いで首が大きな力が加わり、それが頚椎捻挫の原因となることがあります。また高所からの転落や事故の際にも頚椎に負担がかかり、損傷をすることがあります。
  4. 重労働
    重いものを持ち上げる際に、不安定な姿勢や無理な姿勢で行うと頚椎に負荷がかかり、頚椎捻挫の原因となります。
  5. ストレスや疲労
    首の筋肉が疲労している状態で活動を長時間行うと、頚椎に負担がかかり捻挫のリスクがかかります。
  6. 不良姿勢
    猫背や同じ長時間を続けると首の筋肉や靭帯に負担がかかり、捻挫をする可能性があります。

症状

  1. 痛み
    頚椎捻挫の主な症状は、首の痛みです。 痛みは多くは怪我が起きた場所に限局されますが、それが悪化して範囲が広がったり、痛みの強度が増すことがあります。 痛みは、鋭い刺すような痛みの場合もあればずーんとするような鈍痛として現れます。神経圧迫がある場合は、首を動かした際に首だけではなく肩や腕に痛みが走ることがあります。
  2. 筋肉のこわばりや可動域制限
    首の周囲の筋肉がこわばることがあり、これにより首の運動が制限されることがあります。首を動かすと痛みを感じることがよくあります。
  3. 頭痛
    首の痛みに併発することが多く。 通常は後頭部や頸部に局所制限しています。
  4. しびれや異常感覚
    頚椎捻挫によって、神経の圧迫が生じることがあり、肩や腕、手に痺れを感じることがあります。
  5. 筋力低下
    頚椎捻挫によって神経圧迫が生じていると、肩や肘、手に力が入りにくくなります。

診断

  1. 症状:
    上記のような症状を問診で聴取します。
  2. 身体検査:
    首の動きの評価、首の圧痛点の確認、上肢筋力の評価、感覚異常の確認、腱反射の評価
  3. X線検査:
    頚椎の骨の状態を評価するために使用されます。これにより、骨折や骨に変形があるかどうかが確認できます。
  4. CT(コンピュータ断層撮影)
    CTスキャンは、頚椎の骨や周囲の組織を非常に詳細に評価できるため、特に骨の損傷を確認するために検査されます。
  5. MRI(磁気共鳴画像法)
    MRIは、頚椎捻挫による軟部組織の損傷を評価するのに有用です。MRIは、靭帯や筋肉の損傷、神経の圧迫などを視覚化するために検査されます。
  6. 痛みの評価
    痛みの程度を評価するために、痛みスケールや質問紙が使用されることがあります。これにより、治療の進行をモニタリングするためのベースラインが得られます。

治療

交通事故による頚椎捻挫の場合は、自己負担無しで治療が受けられます。運動療法は、頚椎捻挫の回復に効果的ですが注意が必要です。必ず医師や理学療法士、柔道整復師の指導の下で行うべきです。 運動療法の目標は筋力を回復し、柔軟性を向上させ姿勢を改善し痛みを軽減することです。

  1. ホットパックまたはアイシング
    怪我の初期段階では氷を使用し、炎症を軽減するために局所的に冷却します。痛みが軽減してきたら筋肉の痛みを緩和するために温めます。
  2. マッサージ
    柔道整復師や理学療法士などの専門家によるマッサージは、筋肉の緊張を解消し、血行を促進するのに役立ちます。
  3. 電気療法
    電気刺激(TENS)や超音波療法などの電気療法は、痛みの軽減と筋肉のリラクゼーションに起こります。
  4. 牽引療法
    特別な機器を使って、頚椎に軽減的な牽引を行います。これにより圧力が緩和され、神経根やディスクにかかる圧力が軽減されます。しかしエビデンスに乏しいため、当院では牽引療法は行っていません。
  5. ストレッチング
    頚椎の筋肉をストレッチして柔軟性を向上させこりを緩和します。また不良姿勢になりやすい胸の筋肉(小胸筋など)もストレッチする必要があります。
  6. 筋力トレーニング
    頚部および肩の筋肉を強化するための軽度な抵抗運動を行います。特に頚部屈筋である頸長筋や背中に存在する僧帽筋や菱形筋などは弱化すると不良姿勢になりやすいので、治療のターゲットになります。
  7. 姿勢指導
    横から見て耳たぶと肩峰(肩の骨)が一直線上になる姿勢が頚椎にとって良い姿勢です。その姿勢保持を学び、日常生活での頚椎への負担を軽減させます。

接骨院では電気治療やマッサージ、運動療法を中心に治療を行います。それでも症状の改善が乏しい場合は、内服治療や注射治療が行われる場合があります。当院では連携している整形外科クリニックの医師と連絡をとり、受診までサポートさせて頂きます。

交通事故と頚椎捻挫

頚椎捻挫は、交通事故の一般的なケガの一つであり、特にリアエンド衝突(追突)事故や側面衝突事故の際に発生しやすいとされます。その関連性について説明します。

  1. 追突衝突事故
    車が後ろから衝突される事故では、事故の際、後方からの急激な加速力によって首が前方に振られ、その後逆方向への運動が(ホイップラッシュ現象)が起こり、首の筋肉や靭帯が損傷します。
  2. 側面衝突事故
    側面衝突事故でも、頚椎に負担がかかります。衝突により体が振り子のように動き、頚椎に捻挫が生じる可能性があります。

頚椎捻挫は、事故のタイプや衝撃の強さによって症状の程度が異なります。軽度の捻挫は数週間で回復できることが多いですが、重度の場合は長期的な治療とリハビリテーションが必要となることがあります。
交通事故に巻き込まれた場合、頚椎捻挫の症状が現れる可能性があるため、早期の診断と治療が重要です。医師の指導のもとで適切な治療を受けることで、症状の軽減や回復のまた、事故の責任や損害賠償に関する法的問題が発生する場合は、弁護士の協力を得ることも検討すべきです。

予後

頸椎捻挫の予後は、症状の重症度や合併症、治療、個人差に依存します。 重症の場合や合併症がある場合は、医師と適切な治療を立てることが重要です。

  1. 重症度による予後
    • 軽度の頚椎捻挫は、通常、比較的早い回復が期待されます。症状は数週間から数ヶ月で改善することが一般的です。
    • 重度の捻挫や、首の骨折などの合併症がある場合、予防後はより悪化する可能性があります。
  2. 治療による予後:
    • 頚椎捻挫の治療は、症状の重症度により異なります。一般的な治療法には、安静、冷却療法、薬物治療、物理療法、ストレッチ、および筋力トレーニングが含まれます。
  3. 合併症による予後:
    • 頚椎捻挫にはいくつかの合併症がある可能性があります。神経根の圧迫、神経損傷、または椎骨動脈の損傷など、より深刻な合併症は治療を長引かせる可能性があります。
  4. 個人差による予後:
    • 一度捻挫を経験しても、個人差により回復期間の症状や強度が違います。年齢、一般的な健康状態、筋力、アライメント(姿勢)などが影響を与える可能性があります。