シンスプリント(shin splints)は、下肢の骨や筋肉に関連する一般的な運動障害の一つです。シンスプリントは、骨組織に微小な損傷(骨の炎症や骨膜の刺激)が起こることによって発生します。これは骨膜炎ともよばれます。ランナーや他のスポーツ選手によく見られる下腿部の痛みの症状です。痛みは、通常、脛骨(下腿の大腿骨と脛骨の間の骨)周辺に現れます。

原因

  1. 疲労(使いすぎ)
    最も一般的な原因の1つは、運動や活動による過度な疲労です。 特に、ランニングやジャンプなどの跳躍運動を頻繁に行う人に多くみられます。 筋肉や骨は、疲労なストレスに対して適応できる時間が必要で、十分な休息をとらずに長時間な運動を行うことで、脛骨周辺の組織に炎症や損傷が起こることがあります。
  2. 足の形状(アライメント)
    扁平足は、シンスプリントの原因となることがあります。扁平足の場合、土踏まず(足部の縦アーチ)を保持する筋に負担が大きくなり、脛骨周辺の負担が増加しやすいです。
  3. 運動に適さない靴
    十分なクッション性のあるランニングシューズを着用しないことは、シンスプリントのリスクを高めることとなります。 クッション性のある靴は足のアーチや運動に合ったサポートを提供し、衝撃を吸収する役割を果たします。
  4. 柔軟性が低下した筋肉
    筋肉が硬直していると、運動時に筋が付着する脛骨周辺に大きなストレスが加わり炎症や損傷がおきやすくなります。

症状

  • 主な症状は、下腿(スネ)の内側に痛みや圧迫時の痛み(圧痛)があることです。この痛みは通常、運動を開始した直後や運動中に現れ、特に激しい活動中に強くなります。
  • 痛みは一般的に両足に発生しますが、片方の足に限定されることもあります。

診断

痛みや炎症を伴うため、専門家の評価が必要です。診断のプロセスは次のようになります。

  1. 症状の評価
    ランニングやスポーツの際に脚にどのような痛みや不快感があるか詳しく調べます。痛みは通常、運動中またはその後に強くなります。
  2. 身体検査
    痛みの箇所を触診し、問題となっている組織を判別します。筋の柔軟性や足首の関節の可動範囲、足部や足指の筋力に加えて、股関節や体幹の筋力を評価します。また足部のアライメントを評価して原因となっている機能障害をみつけます。
  3. 画像検査
    骨膜炎や骨折を確認するために、レントゲン、MRI、CTスキャンなどの画像検査が行われることがあります。当院では超音波診断装置(エコー)を用いて、疼痛部位の状態を観察して施術に役立てます。その結果、上記の画像検査などによる精査が必要な場合は、当院が連携しているクリニックの受診をコーディネートします。

治療と予防

治療は、症状や原因によって異なりますが、一般的なアプローチは次の通りです。

  1. 安静
    まず、痛みを伴う活動を一時中断し、筋肉と骨に十分な休息を与えます。完全に休息することは稀で、痛みをコントロールしたうえで、運動療法や低負荷の運動を行います。
  2. アイシング
    運動後は炎症を起こすために、痛みがある箇所にアイスパックを使用してケアすることが勧められます。
  3. ストレッチと筋力トレーニング
    下腿に存在する筋肉の柔軟性を高め、強化するために、リハビリで特定のストレッチやエクササイズを行います。当院では、身体検査とエコー観察を駆使して、問題となっている原因組織と機能障害を推察し、効果的な運動療法を提案いたします。
  4. 物理療法
    組織の治癒を促進する超音波治療が有効です。また疲労骨折に至ってしまっている場合は、リーパス治療が有効です。どちらも当院で施術することが可能です。
  5. 正しい靴と装具
    クッション性の良い運動に適した靴と足のアーチをサポートする装具(インソール)を使用することがあります。
  6. 消炎鎮痛剤
    日常生活に支障が出る場合は、湿布などの外用薬や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などで症状を抑える場合があります。当院ではリハビリで痛みが取れず、薬の処方を希望される方に対しては、連携している専門医の受診をご案内いたします。
  7. 運動やトレーニングの見直し
    正しいウォーミングアップやクールダウン、トレーニングの進行速度の調整など、運動習慣の改善が重要です。
  8. その他の治療
    リハビリや外用、内服などの治療でも症状が改善しない場合は、体外衝撃波治療やプロロセラピーという注射治療が行われる場合があります。これらの治療は連携している専門医のいるクリニックでも実施されています。

治療は初期に行われ、正しく管理することで症状の緩和と回復が期待できます。自己判断ではなく専門家と相談しながら進めていくことが重要です。