足関節捻挫(あしかんせつねんざ)は、足首周囲の靭帯や組織に損傷が起こる怪我です。
一般的に以下の2つの主な種類があります。

  1. 内反捻挫:これは最も一般的な足関節捻挫の形態で、足首を内側に捻ることによって外側の靭帯を損傷するものです。損傷する靱帯は、主に前距腓靱帯、踵腓靱帯、前下脛腓靭帯の3つです。
  2. 外反捻挫:これは比較的まれなタイプの捻挫で、足首を外側に捻ることによって内側の靭帯を損傷するものです。損傷する靱帯は三角靱帯です。

捻挫の多いスポーツ

足関節捻挫はスポーツにおいて比較的頻繁に発生する怪我の一つです。以下に、足関節捻挫が多いスポーツとその理由について解説します。

  1. サッカー
    • サッカーは高い身体の負担がかかるスポーツで、選手はダッシュや、方向転換、スライディングなどのアクションを頻繁に行います。これにより足首が不安定な状態になり、捻挫のリスクが生じます。
  2. バスケットボール
    • バスケットボールはジャンプや大幅な方向転換が頻繁に行われるスポーツです。これらの動作は足関節に負担がかかり、捻挫のリスクを増加させます。
  3. バレーボール
    • バレーボールではジャンプやランニングが多く、特にスパイクやブロックの着地で正しく地面に接地できなかったり、他人の足の上に着地した際に不安定になり捻挫することがあります。
  4. テニス
    • テニスでは左右への方向転換やスライディングがよく行われます。これらの動作により、足首の捻挫が発生しやすくなります。

足関節捻挫がこれらのスポーツで多く発生する理由は、以下の発生が影響しています:

  • 急激な方向転換やジャンプなどの高負荷の運動が頻繁に行われるため、足首の不安定性が増し、捻挫のリスクが生じます。
  • グラウンドやコートの表面が不均一であることがあり、足首を捻る原因となります。
  • 選手たちが競技中に接触や衝突が発生することもあり、これが足関節捻挫の原因となることが起こります。

症状

  1. 痛み
    最も一般的な症状は痛みです。 捻挫の程度によって痛みの強さが異なりますが、軽度の場合でも痛みを感じることがあります。
  2. 腫れ
    捻挫すると足首周囲に腫れが起こります。 腫れは損傷した組織からの炎症反応によるもので、軽度から重度の捻挫に見られます。重度ほど腫れが酷くなりやすいです。
  3. 歩行困難
    捻挫が重度の場合、足首の疼痛によって歩行が困難になります。足をかばうように歩くことが一般的で、足を床に完全に接地させるのが難しい場合があります。
  4. 内出血
    重度の捻挫では、足のくるぶし周辺に内出血が見られることがあります。これは、血管や周囲の組織が損傷した結果、血液が組織内に漏れ出したものです。
  5. 足首の動きの制限: 捻挫による痛みと腫れによって足首の動きが制限されることがあります。 特に重度の捻挫の場合は、痛みや腫れによってほとんど動かせなくなります。

足関節捻挫の症状は、捻挫の程度によって異なります。軽度の場合、痛みや腫れが比較的軽く、比較的短時間で回復することがあります。ただし、重度の捻挫の場合、専門的な治療がどの程度の捻挫であっても、初期の適切な処置が重要です。症状が続いている場合や痛みが激しい場合は、医師の診察を受けることを推奨します。

診断

足関節捻挫の診断は、症状や身体検査、画像診断の結果を総合的に評価して行われます。

  1. 身体検査
    • 視診、触診:足首とその周囲の組織を詳細に調べます。腫れ、内出血、圧痛を確認します。
    • 可動域検査:足関節の可動域を評価し、どの方向に痛みがあるかを確認します。
  2. レントゲン検査
    • 足関節捻挫では足関節を構成する腓骨、脛骨、距骨、踵骨に骨折が発生する可能性があります。捻挫の仕方によってはもっと足指に近い部分に疼痛が出現することがあり、その場合は足根骨や中足骨なども骨折する可能性があります。歩けるような軽度の足関節捻挫の場合、骨に明らかな損傷がないことが多いです。歩行できない場合には、きちんと整形外科を受診してレントゲン検査すること勧めています。
  3. 超音波検査(エコー)
    • レントゲンには靱帯などの軟部組織は映らないので靱帯損傷は評価できません。エコーでは軟部組織をリアルタイムに観察することが可能であり、損傷した靱帯やその程度を評価することが可能です
  4. MRI(磁気共鳴画像診断)
    • 靭帯や軟部組織の損傷を詳しく評価するために、MRIが行われることがあります。軟骨損傷はレントゲンやエコーでは診断できず、唯一MRIでのみ診断が可能です。MRIは組織の詳細な画像を提供し、損傷の程度や位置を特定するのに役立ちます。
  5. その他の検査:
    • 医師の判断によって、必要に応じて血液検査や他の画像検査(CTスキャンなど)が行われることもあります。

エコー観察の有用性

足関節捻挫の診断と治療の為、エコーは有用なツールとして利用されています。

  1. 損傷の程度の評価
    エコー観察は、足首の靭帯や筋肉、軟部組織の損傷の程度を評価するのに役立ちます。 これにより、捻挫が部分的なものなのか、完全に断裂しているか評価できます。これは正しい治療計画を立てるために重要です。
  2. 血腫や浮腫の検出
    捻挫に伴う血腫や浮腫などを視覚化できます。これは治療の進行をモニタリングする際や、合併症の早期発見に役立ちます。
  3. 軟部組織の評価
    足関節捻挫では、靭帯や腱だけでなく、筋肉や神経などの軟部組織も影響を受けます。足関節捻挫には靱帯以外の損傷が一緒に発生している場合があります。
  4. 即時実行
    エコー検査は機械があればその場で実施できるため、患者の足関節の状態を即座に評価できます。これにより、施術の迅速化や修正が可能になります。
  5. 放射線被ばくの回避
    X線やCTスキャンなどの放射線を使用しないため、エコー検査は比較的安全な画像評価です。

足関節捻挫の診断や治療計画の策定にあたっては、エコー評価は臨床家にとって重要な情報を提供し、患者の回復プロセスをサポートするためのツールとなります。経験とスキルを持った臨床家による観察が必要です。当院では経験を積んだ超音波スキルの高い柔道整復師がエコー観察を行います。

治療

足関節捻挫の回復には時間がかかります。とりあえずで運動を進めず、痛みや違和感に注意を払いながら、専門家の指導の下でリハビリを行うことが大切です

  1. 初期のケア
    • 怪我をした直後は、安静にして冷却、圧迫、挙上(RICE療法)を行い、腫れと炎症を制御します。炎症がおさまったら、運動療法を開始します。
  2. 可動域訓練
    • まず、痛みのない範囲で、足首をゆっくりと動かして少しづつ範囲を広げていきます。損傷した靱帯によって制限する運動方向があるので、診断をきちんと行う必要があります。
  3. 筋力強化
    • 筋肉の強化は足関節の安定性を向上させ、再発を防ぐのに役立ちます。次の筋力トレーニングを行います。
      • 内がえし筋(足首を内側に向ける筋肉、例:後脛骨筋)と外返し筋(足首を外側に向ける筋肉、例:腓骨筋)を鍛えます。
      • 腓腹筋(ふくらはぎの筋肉)の強化。
      • 足のアーチをサポートするために足部内在筋を鍛えます。
  4. バランス訓練:
    • 不安定な表面でのバランス練習や、片足で立つ練習を行い、足関節の安定性を高めます。足くび周囲に存在する固有感覚を司るセンサーを強化することで向上します。
  5. ストレッチング:
    • 筋肉の柔軟性を維持するために、アキレス腱やふくらはぎ、足首のストレッチを行います。
  6. アスレチックトレーニング:
    • 痛みが軽減し、運動能力が向上してきたら、運動プログラムを徐々に進化させ、より高度な運動やスポーツ活動に戻る準備をします。
    • スポーツを行う際には、正しいフォームを維持する運動することが大切です。間違ったフォームで運動を行うと、怪我のリスクが懸念されます。
  7. 手術療法
    • 靭帯修復術:損傷した靭帯を修復する手術です。 通常、縫い合わせ糸や靭帯を固定するためのスクリュー、針、が使用されます。
    • 靭帯再建術:靭帯が完全に断裂している場合、他の組織や靭帯を使用して新たな靭帯を作ります。これには自身の組織(筋腱)が使用されることがあります。
    • 当院では手術が必要な症例は連携しているAR-Ex尾山台整形外科の専門医をご紹介させていただきます。