野球肘(英: Baseball Elbow)は、野球やボールソフトなどのスポーツで特にチャーに見られる一般的な怪我です。 野球肘は、肘の内側(尺骨側)に痛みや炎症を考慮した病態です。
原因
- 投球のしすぎ
投球やピッチング動作では、肘(特に内側)に大きなストレスが加わります。十分な休息や適切な回復期間を確保せずに、過剰なトレーニングや投球を行うことは野球肘の危険性を高めます。小学生〜高校生の成長段階にある選手は、特に注意が必要です。 - 乏しい投球技術
投球の技術が乏しい場合、通常よりも大きなストレスが肘に加わることにより野球肘の発症を促進する可能性があります。例えば投球時の肘下がりです。。正しい投球フォームを身につけることが重要です。 - 変化球の多用
カーブボールやスライダーなどの変化球を過度に投げることは、肘に追加のストレスをかける原因となります。 これらの球種は腕を回転させる動作が複雑で、肘に負担がかかります使いやすいため、適切なトレーニングと制限された使用が重要です。 - 成長期
成長期は骨や軟骨が発育中であるため、靱帯に対して強度が弱く投球時のストレスで野球肘のリスクがあります。
症状
野球肘の症状は個人によって異なる場合があります。症状の程度や進行具合は、怪我の重大さによって異なります。一般的に、これらの症状が出た場合、医師の診察と診断が必要です。
- 痛み
- 急性の痛み: 投球時や投球後に急激な痛みが発生することがあります。 特にカーブボールやスライダーなどの変化球を投げた際に痛みが強く現れることがあります。
- 慢性的な痛み: 投球を続けるうちに、肘に慢性的な痛みが現れます。この痛みは繰り返しの投球によって悪化する傾向があります。
- 腫れ(むくみ)
- 投球後、肘が腫れることがあります。 腫れは炎症の反応によるもので、肘の関節や周囲の組織に損傷が生じた結果です。
- 運動制限(可動域制限)
- 野球肘の患者は、肘が完全に伸びなくなったり、肘を曲げたときに完全に曲げることできないなど非投球側との左右差が出現します。
- 筋力低下
- 野球肘の患者は、尺骨神経へのストレスの影響で肘周辺の筋肉が弱くなることがあります。
- ポップやクリック音
- 投球時に肘でポップやクリック音が聞こえます。これは、肘の関節に異常がある可能性を示すことで起こります。
- 感覚異常(しびれまたはピリピリ感)
- 一部の患者は、肘や前腕にしびれやチクチク感を経験することがあります。これは肘関節の内側を走行する神経の炎症の可能性があるため重要な症状です。
診断
野球肘の診断は、患者の症状、身体検査、および画像検査の結果を総合的に評価することによって行われます。
- 問診(症状の詳細な聴取)
主に痛み、腫れ、しびれ、炎症、肘の安定性に関する情報が収集されます。症状がいつ始まるか、どのような運動や活動で生じるかについても詳しく聴取します。 - 身体検査
肘の可動域、筋力検査、圧痛、感覚検査、各種スペシャルテスト行うことで疼痛出現組織を特定していきます。 - レントゲン検査
骨に異常があるかどうかを確認するために行われます。 野球肘の診断には主に軟部組織の問題が関与しており、レントゲンは通常、異常を示さないことがありますが、成長期の場合、靱帯の付着部である骨の異常がみつかる場合があります。当院では骨の異常が疑われる場合、連携している整形外科専門医をご紹介いたします。 - MRI(磁気共鳴画像)
軟部組織の異常を詳細に評価するために使用されます。内側側副靭帯や筋肉、軟骨に損傷があるかどうかを判断するのに役立ちます。 - エコー(超音波)
靱帯や筋肉などの軟部組織の異常を評価できます。肘は体表から浅いため、骨の異常も評価することが可能です。最もメリットなのは動態評価が出来ることです。実際に野球で肘に負担のかかる動作を真似たときに、肘痛が存在する場所にエコーを当てることで、問題をリアルタイムに評価することができます。当院は院長がエコー経験が豊富であり、受診時にその場でエコー評価をおこなうことが可能です。
治療
野球肘は重要なスポーツ障害であり、治療と予防が重要です。早期の診断と適切な管理は、選手の復帰とパフォーマンスの向上に役立ちます。医師や柔道整復師などの専門家の指導のもと、個別の治療計画を立てることが大切です。
- 休養
野球肘の治療の最初のステップは、疼痛が出現する活動を中止し、肘への負担を軽くすることです。症状によっては投球から離れることも重要です。これにより炎症が収まり、回復が進みます。 - 物理療法
炎症を軽減するために、超音波治療などを行います。肘関節周囲の筋肉を賦活させる電気治療も有効です。投球後に疼痛が出現する場合は、肘にアイシングをすることで疼痛や炎症を沈静化することが可能です。 - 薬物療法
痛みや炎症を管理するために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が処方されることがあります。 なお、これらの薬は炎症を軽減するだけで、根本的な問題は解決しません。 - 理学療法
徒手療法で筋肉や脂肪、神経の動きの悪い箇所の滑走性を改善させて症状の改善を図ります。またストレッチや筋力トレーニングなどの正しい運動療法を行うことで徒手療法で改善させた滑走性が戻らないようにします。投球動作は全身運動ですので、下半身の柔軟性も重要です。野球肘の理学療法では下肢の柔軟性も改善させる必要があります。 - 投球フォームの改善
野球肘の再発を防ぐために、投球フォームの改善が重要です。 投球の負荷の負担を軽減し、正しい投球テクニックを習得することが大切です。 - 手術
内側側副靱帯が断裂していたり、遊離体(関節ねずみ)が存在する場合は手術が必要なことがあります。